この記事は、以下のような方におすすめです
- 定時退勤を目指している方
- 働き方改革に興味がある方
- 具体的に何をしようとしているのか知りたい方
こんにちは 元小学校教師のペリカンです
皆さんの学校は、「働き方改革」進んでいますか?
「働き方改革」という言葉は聞くけど、実際のところ詳しく知らない方も多いと思います
今回は、H31中央教育審議会が出した「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」を解説します
学校の働き方改革を理解するポイントは、
長時間労働は、給特法と日本型教育が原因
解決の糸口は、業務の精選とチーム学校
国の宝のために教師を犠牲にするのはやめよう
原文はこちらからご覧いただけます↓
わたしは、社会からの要求を国が取捨選択せず詰め込み過ぎたことが問題だと考えています
真面目な人ほど自分の首を締めていっている、こんな苦しい現状を早く解決したいと思いこの記事を書くことにしました
ぜひ自分のため、同僚や学校の子どもたちのためにも国が考えている「働き方改革」についてご覧ください
「働き方改革」の始まり
H28.9月「働き方改革実現会議」開始
H29.3月「働き方改革実現計画」策定
働き方改革は,日本の企業文化,日本人のライフスタイル,日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革
働き方改革実行計画 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/01.pdf
改革の目指すところは,働く方一人ひとりが,より良い将来の展望を持ち得るようにすることである
働き方改革実行計画 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/01.pdf
と政府が社会に向けて打ち出しました
今までの働き方は「働いた分だけ稼ぎが増える」「24時間戦えますか」など長時間勤務によって会社から認められ、人としての価値が上がる傾向にありました
ライフワークバランスを考えている人は、ごく少数だったはずです
しかし、政府は今までの「働くこと」への考え方をまるっと変えて、人生豊かにしていこうよ!と舵を切りました
「ブラック学校」の問題点
問題点は一つ、「業務の肥大化」です
原因は、2つ
- 「給特法」による薄れた時間意識
- 「日本型教育」による業務範囲の曖昧さ
①「給特法」による薄れた時間意識について
現在「給特法」により、給料に月の給与の4%(教職調整額)が上乗せされています
残業しようが、しまいが定額支払われるわけです
管理職や教育委員会は、残業をやめさせる理由がありません
そして、働く教師は時間を意識して働くことがなくなっていきます
②「日本型教育」による業務範囲の曖昧さについて
日本は「日本型教育(学習面と生活面から総合的に指導する教育方針)」をとってきました
金八先生のような教育スタイルが想像しやすいと思います
- 全ての子どもたちに一定水準の教育を保証する平等性
- 知識と人間性を調和的に全面的に育てる全人教育
この「日本型教育」は世界で評価されているようです
しかし、家庭や地域と学校の境界線が曖昧になり、学校への要求が増えてしまいました
以上2つの問題点によって、学校は業務の精選をせず、業務の範囲を広げてしまったのです
改革に向けて検討したこと
学校の働き方改革の目指すことは、”子どもたちへより質の高い教育を受けさせる”ことです
そのためには、持続可能な教師の働き方に改めていく必要があります
解決する糸口は、「業務の精選」と「『チーム学校』の強化」と示されていました
下記に5つの方策の要点をまとめました
① 勤務時間の管理と健康を意識した働き方
現状
公立学校の教師は、労働基準法の一部を除いて基本的には適用されます
しかし、給与と労働条件は「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」が適用されます
よって、校長の命令による4つの内容(超勤4項目)以外の残業は全て「自発的な行為」となります
また、学校の労働安全衛生法による体制整備が十分ではないことがわかりました
具体的には、医師との面接指導体制が不十分なことが挙げられています
H29の調査では長時間労働や高ストレスによる精神疾患の休職者が5,000人以上
その2割が退職することから、教師の人手不足の原因にもなっています
方策
長時間労働や心身の不調を起こさないために、以下4つの方策をあげました
- 勤務時間の管理・ガイドライン
- 適正な勤務時間の設定
- 労働安全衛生管理の必要性
- 教員の働き方の意識改革
「労働安全衛生管理」とは、法律や規則をもとに労働者の安全と健康を保護する活動です
現状、未整備の学校が全体の1割程度あります
労働安全衛生法で義務付けている管理体制の未整備は法令違反に当たります
具体策
- 衛生管理者を選任し、その者が学校全体の業務を把握し適切な役割分担を行う
- 産業医を選出し、教職員の健康管理等を行う
- 地方公共団体は、ストレスチェクの結果の分析を通じた適切な措置を行う
② 業務の明確化・適正化
基本的考え方
学校が担うべき業務は、学習指導・生徒指導・学級経営が基本です
慣習的に行っている業務は、優先順位を考えて廃止していく必要もあると答えています
「日本型教育」よって曖昧になった業務の適正化を図るため、3つに分類されました
- 基本的には学校以外が担うべき業務
- 学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
- 教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
方策
文部科学省・教育委員会・学校それぞれに対する方策に共通することは、
教師の専門性・安全管理など義務がある業務 ➡︎ 教師
教師の専門性・安全管理など義務がない業務 ➡︎ 事務職員や外部
この共通点のもと、
- 文部科学省は社会への周知および業務の管理・削減
- 教育委員会は、業務の振り分けおよび地域への理解を求める
- 学校は、業務の見直しおよび管理職の権限を使った業務の削減
をするように記されています
また学校が作成する計画の見直しや教育課程の編成・実施についても言及されていました
③ 組織運営体制のあり方
基本的考え方
教師は個人プレーが多く、やりがいがある一方、業務を一人で抱えがちです
学校が組織として対応できるように、学校の組織体制の在り方を見直して、教師本来の業務に専門性を発揮できる環境を整えていくことが求められています
長時間勤務の調査をすると、以下のような教師に業務が集中することがわかりました
若い
6歳未満の子どもがいない
通勤距離が短い
管理職である副校長・教頭の勤務時間も長いことから、学校組織マネジメントを十分に発揮できる状況ではないと指摘もあります
方策
管理職のリーダーシップを発揮した学校組織のマネジメント
ミドルリーダー(主幹教諭・事務職員など)の活躍
「チームとしての学校」の実現
「チームとしての学校」とは、校長のリーダーシップのもと学校が一体的に管理・経営され、教職員や多様な人材が専門性を活かして子どもたちを育てていく学校を表します
校長は、組織に求める能力を明確化し、教職員の育成に努め、能力が発揮されているか評価する必要があります
④ 勤務時間制度の改革
給特法のあり方
教師は一般的な仕事と勤務の時間管理が違うため、S46年に「給特法」が制定されました
当時の業務量や残業時間は現在と比べると大きく異なります
残業代の支給や教職調整額の増額について意見も出ていますが、
まずは業務改善による在校時間の縮減に手をつけるべきと答えていました
ここで検討された方策がこちら↓
給特法の見直し
一年単位の変形労働時間制の導入
一年単位の変形労働時間制の導入について
現行では、一年単位の変形労働時間制が認められていません
週休日の振替を取得しにくい現状や、成績処理に追われる学期末(繁忙期)と長期休業中(閑散期)の在校時間の差が生じています
よって、以下の点について注意した導入の検討がされています
- 長期休業中の業務の縮減(部活動休養期間の設定、研修の精選など)
- 会議や研修は所定の勤務時間内に行う
- 子どもたちの在校時間の延長はしない など
⑤ 働き方改革の実現に向けた環境整備
①から④の方策を実現させるために環境整備が必要です
文部科学省が、各学校及び教育委員会に対する支援体制を整えていくことも求めています
専門的な人材の強化・充実
- 専科職員
- 事務職員
- スクールカウンセラー
- 授業サポートスタッフ
- 理科実験補助員
- スクールロイヤー
- 部活指導員
- 児童支援スタッフ
- コミュニティスクール
勤務時間の適正化や業務改善・効率化への支援
- 登下校対応への地域人材の協力
- 都道府県共通の公務支援システム
- 部活動の適性化とクラブの連携
- 集金の公会計化
さらに検討が必要な事項
- 小学校の教科担任制の充実
- 時数を含む教育課程の見直し
- 教師の養成・免許・採 用・研修全般にわたる改善・見直し
- 先端技術の活用と校外との連携
- 小規模校のあり方
- 教師の働き方を調査・監査する人事委員会の活用
働き方改革の確実な実施のために
学校で働く教師が、働き方改革が進んでいることを実感できるよう、以下のように役割を担って実施していきましょう
文部科学省
新しい業務を付加する場合は、スクラップ アンド ビルドの原則のもと行う業務改善を把握し、できていない地方自治体は公表する
教育委員会
働き方改革の方針を策定する
会議の議題に取り上げ、行政部局と共有して施策に取り組む
保護者・地域
”子どもたちの未来のために質の高い教育”を実現させるために、理解と協力が必要
今までは教師の犠牲のもと、子どもたちの教育を進めてきました
これからは国の宝である子どもたちを育てる教師に、心身ともに健康かつ質の高い授業や教育活動を担ってもらうよう社会全体で理解・協力していきましょう
まとめ
中教審で審議された学校の働き方改革を理解するのポイントは、
長時間労働は、給特法と日本型教育が原因
解決の糸口は、業務の精選とチーム学校
国の宝のために教師を犠牲にするのはやめよう
原文の中では、「給特法によって、教師が自らの働き方を省みる機会を奪っていた」と書かれていました
まずは「こんな働き方は間違っている」と教師一人ひとりが自覚すること
それが働き方改革のはじめの一歩になると思いました
みなさんのやりがいが搾取されない
「定額働かせ放題」だなんて言われない
犠牲にならない
そんなワークライフバランスで働ける制度が整って働きやすい学校になったらいいですね