この記事は以下のような方におすすめです
- 一年単位の変形労働時間制について知りたい方
- 教師の働き方・労働環境に興味がある方
- 定時退勤がしたい方
こんにちは 元小学校教師のペリカンです
学校の働き方改革によって、R3年度から施行になった「一年単位の変形労働時間制」
ざっくり説明すると、
繁忙期の勤務時間を延長して、長期休暇の出勤日を減らす制度
一体、どのような制度なのか具体的に解説します
一年単位の変形労働時間制とは
R3.12「給特法」の改正で、一年単位の変形労働時間制が導入可能になりました
導入する意義について、休日のまとめ取りができれば……
- 教師がリフレッシュできて、よりよい教育活動ができるようになる
- 教師の魅力向上によって、教師になりたい人が増える
と書かれています
導入するために、
- 学校が教師の在校等時間を客観的な方法等で把握していること
- 教師たちの時間外在校時間が月42時間、年320時間以内 など
という前提条件や上限がつきます
文部科学省は、以下のような導入のイメージを紹介しています
文部科学省のイメージする年間変形労働後の勤務時間等 (文部科学省資料より)
長時間勤務になる繁忙期(4・6・10・11月)の勤務時間を週3時間増やして、
長時間勤務が少ない閑散期(8・12月)の出勤日を5日分減らします
【 1日1時間の延長を週3日行う場合 】
勤務時間8時間30分 休憩時間60分 → 始業から終業まで9時間30分
8時出勤 17時30分退勤
夏休み3日間・冬休み2日間の計5日間が休み
夏休み中の勤務時間を縮減する使い方(午後3時に退勤)は、休日のまとめ取りという意義を満たさないため認められません
育児や介護をしている教師は、一律適用しなくても良いと注意書きがありました
メリット
新しい取り組みはデメリットに目が向きがちですが、まずはメリットから!
海外旅行に行きやすい
現状、盆休みと正月休みは基本閉庁日になっています
閉庁日と変形労働時間制による休日を合わせて使うことで10日程度の連休ができます
10日間の休みがあれば、アジア圏に留まらずアメリカやヨーロッパへ渡航する時間の余裕があります
会議や研修を気にせず、休みを取れるのは気が楽ですよね
時間外労働時間が減る
教育委員会や管理職は、教職員の労働環境を管理する役目があります
長時間の時間外勤務を認めてしまっては労働基準法上あってはなりません
しかし、働かないと繁忙期の仕事は終わらないのが現実です
そこで繁忙期の勤務時間を延長し、閑散期は勤務日を削減すれば、年単位の時間外労働が減ります
労働環境が整備されたクリーンな職場になるわけです
勤務時間を意識するようになる
一年単位の変形労働時間制を導入すると、時期によって勤務時間が異なります
また、育児や介護によって適用していない職員も混在するため、定時を意識した働き方が進むと考えられます
導入すれば、今よりも休憩時間の取得や在校時間の上限も厳しくなることでしょう
定時で帰るためにタイムパフォーマンスを意識した働き方が当たり前の職員室になるのではないでしょうか
デメリット
中教審も働き方改革は、多くの問題が複雑に絡み合っているため、全てを同時に改善していかないことには変わらないと言っています
しかし業務の削減が進んでいない今、この制度を導入すると以下のようなデメリットが考えられます
長期休業の活用ができない
子どもが登校する日は、授業だけでほとんどの勤務時間が使われています
そのため長期休業中は、保護者面談や来学期に向けた会議、準備を行っています
また、校内・校外問わず研修も複数計画されています
出勤しない日が増えると教師の義務である「研修や研鑽」の時間が取れません
教師や教育の質の向上には、子どもがいない時間こそ有効活用していく必要があるはずです
隠れた超過勤務
導入すれば時間外労働はより一層厳しく取り締まるようになります
業務の精選や削減がないまま、勤務時間を厳守すれば仕事が溜まる一方です
仕事を持ち帰るか、タイムカードを切って学校に残るなど隠れて働く教師が出てきます
これでは心身の疲労は蓄積し、夏休みのリフレッシュに間に合いません
また、正確な記録がない勤務は勤務時間として認められず、過労死であっても労災の判定がおりなかった事例もあります
出退勤の管理が困難
出退勤の管理は副校長や教頭、事務職員が担当します
- 繁閑によって勤務時間が変化する教職員
- 育児や介護をしていて適用されない教職員
- スクールサポートスタッフやスクールカウンセラーなど個別のシフトがある職員
これらの複雑な出退勤の管理・手続きは、大きな負担になります
問題点
問題点は2つ
- 不十分な業務の精選・削減
- 需要のない「休日のまとめ取り」
まず、本制度を検討・導入する以前に業務の精選・削減が不十分だと考えます
学校の働き方改革の答申の通り、まずはスクラップすることが先ではないでしょうか
各学校に判断を委ねていては、いつまでも変わりません
資料の電子化や集金の公会計化など地方自治体が統一して取り組めば、長時間勤務の改善はもっと進むはずです
次に、「休日のまとめ取り」にどれほどの人が魅力を感じるのでしょうか
教師を志す人たちにとって魅力的なものは、以下のような日常だと考えます
- 余裕を持って子どもたちと向き合える時間
- 教師の力を磨き合える職員室
- 毎日定時で帰れる労働環境
休日がまとめて欲しければ、年次休暇を使えばいいはずです
働く者として認められた権利を同調圧力や過度な責任感で無駄にすることはありません
まとめ
一年単位の変形労働時間制とは
繁忙期の勤務時間を延長して、長期休暇の出勤日を減らす制度
導入後の明るい未来が見えてこない制度でした
学校の働き方についてみんなで考え、改善していけるといいですね
ペリカンのひとりごと
休憩中にゆっくり昼食を食べて、持ち帰り仕事もなく、定時に帰る夏休み
これって閑散期なのでしょうか